2020年10月24日土曜日

24、魔法少女育成計画restart

こんちは人都です。
あれです、今日はもういろんな要因でボロボロなのでまともに文が書ける気がしません。
さっき酔っぱらった状態で部屋のアンプに小指ぶつけてそのままふて寝しようかと思いました。
ですけれど、25日まで来て更新を止めるのはさすがに忍びないので無限回読んでる本の話だけします。
魔法少女育成計画 restart (前) (このライトノベルがすごい! 文庫) 遠藤 浅蜊 https://www.amazon.co.jp/dp/4800201829/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_zZeLFbNXE7X0V
最高の魔法少女と地獄の百合、ライトノベルらしくない質感に定評のあるまほいくシリーズ二巻目です。

このごくありふれた世界の裏側には「魔法の国」という不可思議な力を行使する独立国家が存在しています。
そしてそこから人間世界への万遍の無い干渉と調査、そして少しの善行の為に成立しているのが「魔法少女」と呼ばれる存在です。
この前編表紙で事態が呑み込めないような顔をしながら巨大なフライ返しを掲げる少女「ペチカ」もその一人。
魔法少女たちのほとんどは妖精のスカウトマンを通じて希望の下に試験を経て魔法の国の要望や指令に時折答える代わりに、固有の二つとない魔法と素材が何であれ非の打ちどころのない美少女の容姿となることの出来る変身権そして驚異的な身体能力等の超常的異能を若干私的利用してもよいという対価を得ることで合意を結んでいます。
しかしながら、その固有魔法というものは使いやすいものからピーキーなものまで確認されるのにもかかわらず、合意を得た後でなければ自分がどのような力を授かれるのかは運営の目線からも全く知ることが出来ないというのが一つの欠点ではありました。
それが人助けに役立つものか、暴力言語を補助するものか、はたまたどうやって使うのか見当のつかないものまで。
そしてペチカの授かった人を喜ばすことに適した魔法「とても美味しい料理を作れるよ」は言葉すらも交わすことの出来ない争いの場において、全く使う当てのないはずれの魔法に成り下がってしまいます。

ペチカが突然強制的に巻き込まれたのは「魔法少女育成計画」と題された異常にリアルなゲーム形式の異世界でした。
魔法少女の世界には若干荒くれた者による戦闘鍛錬サークルや運営により近い機関があるとは聞いたことはありますが、魔法少女の中ではごく平凡であったペチカには理解できない状況に巻き込まれる因縁の覚えが一切ありません。
RPGのように襲い来る敵モンスターを殴ることすらできず、やっとのことでパーティに滑り込んでもおいしい料理は何物も傷つけることは平凡に幸福な中学生の彼女の性格や魔法の特徴からしても不可能で、結局のところ全員がかわいい戦闘ヒロインの中では大して働くこともできないお荷物になることしか出来なくなってしまいます。
「戦う魔法少女」と「戦わない魔法少女」の間には容易には分かり合えない溝がありました。
時が経つにつれ、この異常な空間には常識的にありえないはずの要素が組み合っていることが判明してゆきます。
解くことの出来ない変身と経過日ごとに口座に加算される金額、安全対策の杜撰なステージと自己犠牲を推進するようなシステム、倒すべき魔王の不在と魔法少女の対立を煽るイベント、魔法の国との連絡手段の遮断そしてゲーム内と連動した現実世界での死。
そんな理不尽な状況であってもペチカには生き抜く決意として、現実での一筋の恋がありました。
あまり愛嬌のある容姿ではない智香にとって、あこがれのサッカー部の男の子・二宮君とお近づきになるにはその有無を言わせぬ美少女の体と胃袋を掴むことの出来るペチカの存在が必須だったから。
ペチカたち16人の魔法少女ははゲームのクリア、そして討伐すべき魔王と裏に隠された陰謀に持てる物の全てでぶつかることを決意します。

まほいく初の二段構成作品であり、その分公募作品であった無印版以上に作品内に「人間としての彼女たち」が組み込まれ作者が得意とするガワと中身の対比がとてもよく効いた作品です。
無印は共同の敵が良くも悪くもいなかったのですが、今回はクローズドシナリオに加え失踪した魔王についての謎解きや、自分たちの集められた理由についての謎等が存在することでバトルロイヤルと人狼ゲームめいたサスペンスも楽しむことが出来ます。
そして無印からは内に秘める物が加速したスノーホワイトもチラリと登場しますよ。
そしてこれは何度でも言いますが、人が何人も死ぬのにちゃんとこちらに印象を残して時に別の少女に意思を遺していく描写のお家芸がもう抜群に効いています。
別発売の短編で平穏な日常を補完するのも、傷にブートジョロキアぶち込むぐらい衝撃を与える作家ですからね……魔法少女は誰だって主人公になり得る……。
あとプフレとシャドウゲールのコンビはほとんど合法麻薬カップリングです、知ってね。

限界が近いのは今日はこの辺で。
まほいくを読みなさい。
人都でした。

2020年10月23日金曜日

23、リング

 こんちは人都です。

リング (角川ホラー文庫) 鈴木 光司 https://www.amazon.co.jp/dp/4041880017/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_Q5QKFbA6GYHV3
今日は途中に気分の問題で読むのを止めてしまっていたホラーの名作を読みました。
この本で気分を悪くした、というよりも現実の関係でおどろおどろしいものから距離を置きたくなることが過去にあり、そのため積読タワーの一部となっていた本です。
私はいつもこのブログを書く際にamazonの販売ページのリンクを付けているのですが、なんというか新装された方の表紙を見ると若干目が合って嫌です。
こちらの古いバージョンは全然平気な表紙なんですけれどね…。
ちなみに、私は今まできちんとリングシリーズの映画を見たことが実はなく、強いて見たのも貞子VS伽椰子を薄目で、というレベルなのでそちらのことは一切語りませんし語れません。
そして今後も絶対に見る気はありません。
ホラーの媒体で一番苦手なの実写なんです、怪談とかならいくらでも大丈夫なんですけれど。

週刊誌記者である主人公・浅川は偶然乗り合わせたタクシーの運転手の他愛もない雑談から、九月五日に発生した高校生らの場所を違えた奇妙な同時不審死事件の存在を知りました。
話を聞くところによればその遺体の共通項として何の前触れもなく心臓発作で即死したことや死の直前に頭を掻きむしったかのように髪が抜け落ちていたこと、そしてその顔がいずれも恐怖に歪み目を見開いていたと目撃者や調査資料は語るのです。
退屈でありふれた社会派取材に飽き飽きとしていた彼は、ジャーナル精神からこの不気味で奇妙な偶然に惹かれ好奇心の向くままに同時不審死の被害者の身元と予測される共通項を割り出し始めます。
それらの物証の終点にあったのは高校生集団の旅にいかにもありそうな箱根のホテル、そして客が寄せ書く形式の旅ノートとラベルの無い一本の黒いビデオテープでした。
浅川は取材の一環として問題の一室でその謎のビデオテープを視聴し、この映像がただの恐怖ビデオではないという身を持った気づきと、一週間の余命宣告を得る当事者となるのです。
これは自分一人の力では解決することが出来ないことを悟った浅川は、軽率ながらも幅広い人脈を持つ腐れ縁の危険な男・竜司を合意の下でこの因縁に巻き込みます。
ビデオに残された「あるおまじないを実行しなければ一週間でお前は死ぬ」という呪い。
しかしながら、何者かによって偽装の為にごまかされたその「おまじない」。
彼らはその正体を突き止めるため、定められた運命に抗うためオカルトに対し徹底的な情報収集を始めることとなるのです。

この小説は恐らく商業Jホラーで一、二を争う知名度を持つ恐怖存在「貞子」が初出した作品です。
しかしながら、あまりにもその「白ワンピ、長髪、目力」等の若干そういうジャンルとして概念化しているビジュアルはこの紙面ではほとんど描写されることがありませんし未視聴の私にも分かるほど映像化された印象とは似ても似つきません。
言ってしまうと「来ません」、これ実は「来ません」。
どちらかといえば異常現象に人の技術の全てで迫る、死のリミットに追われたサスペンスや謎解きのミステリーに近いでしょうか。
こういうことを言うのも怒られてしまいそうですが、漠然とした呪いや異常に対して非常に古典的で地味な作業を繰り返しながら迫っていく様子はどこか財団系の作品にも似た妙な存在しないリアリティを思わせます。
もしかして実写映画化された際に映像スタッフの癖が如実に出てああなった部類の作品なのでしょうか……。
これは「貞子というホラーキャラクター」に恐怖することを楽しんだり登場人物の不遇さを笑う作品というよりかは、「山村貞子という数奇な一生」に焦点を当てた情景描写の豊かなドキュメンタリーやルポに近いかもしれません。
本当に全然派手な恐怖はないんです、その代わり常時綿を喉に詰まらせるような感覚に陥ります。
そもそも貞子って死んで変異した霊的存在よりも超能力者に近しいなんて知らなかったし。
いわゆる怖い女が近寄ってくるJホラーな映画通りのイメージを求めると、若干拍子抜けしてしまいそうですが所見の私にとっては非常に質が高いサスペンスとして楽しむことが出来ました。
確かに対象は非日常的で不定形の恐怖を湛えていますが、常人であっても実施に足を使い情報をかき集めることで確かにその輪郭をとらえることが可能なかつて実在した存在です。
ちょうど家に「らせん」も備えていますから、近いうちに読んでしまおうと思います。
意外とグロテスクや性的のシーンもないので、表紙の怖さは抜きに映像のリングがだめでも小説のリングはかなり読みやすいかもしれませんね。
とってもおすすめです。
人都でした。

2020年10月22日木曜日

22、マーメードスキンブーツ

 こんちは人都です。

今日も図書館の廃棄救済枠の本を読みました。

Mermaid Skin Boots 桜井 亜美 https://www.amazon.co.jp/dp/434401068X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_qtAKFbZBSQ67E

なにかそういうタイプのモデルさんの写真集にも見える独特な俗っぽさ、とけだるげな視線。

タイトルのよく考えれば意味の分からない「マーメードスキンブーツ」という言葉は何を指示しているのか。

それは2005年にフリードリッヒ・フォン・ワルターの提唱したDNAの可能性を論じた意見からの引用でした。


この物語の主人公は美大で彫刻を専攻する20歳を目前にした破滅的性分を持つ女性、綾瀬ナジュです。

彼女は元来漫画絵やイラストを好んでいましたが、爛れた壊れかけの家庭はそれを許さず結局離縁するような形で夢を優先させることでナジュの現状は成立していました。

その現状とは大学をふまじめに修めつつ、退廃的に搾取されるためのセックスフレンドを五人も侍らしてはダーツで当たったものを気晴らしのために呼び出すという、到底清いとは言い難いどろりとした美学以外には何もない乱雑な「エロいおもちゃ」を演じる生活です。

そんな生活の中では、彼女は自身のことを高い頻度で人魚姫に、一人暮らしの部屋を最高の理想の世界観を実現する城として改装し、見立てるようにして評価を下します。

何故そんな半ばうぬぼれたことがいえるのか。

それは奇妙な偶然か呪いによってか、彼女の家系の女が20歳でどんな状況であれ命を落とすという不可思議なジンクスにまとわれていたからでした。

実際に彼女はそのせいで身内も、最も大切な姉も失ってしまった過去があるのです。

そしてそんな家庭の中、父親はナジュを不潔でだらしがないと終わらない批判をぶつけるだけの存在となり果てていました。

彼女は結果的に家を出ることで志望進路へと歩みを勧めたものの、その先にあったのは「自分には才能がある」という自惚れのみでは戦うことの出来ない世界です。

ぐちゃぐちゃな思想の学生たちと、ある程度の距離感と共に囲まれながらナジュの劣等感と寂しさ、そして悲しさは加速していき、その度にダーツで決めた歪んだ関係性のセックスフレンドを自らの体調に構わず「城」に呼び出す毎日。

数少ない正常な日常は美大アトリエでの敗北を感じながらの製作と、アルバイト先での交わらないセフレ抱え仲間である演劇派クズ男とのどうしようもない雑談。

彼女は対外的評価とは全く異なり、巨大な自己否定と孤独に殺されそうになる心細い生活を送る自分を大切に扱おうとも思えない、そして誰の唯一にもなることの出来ない人物でした。

しかしある日、彼女がアルバイトにより取り損ねた単位の補填課題をこなすため海外へと向かった時、飛行機で隣り合っただけの男・霧帆と偶然に会話を交わし今まで感じたことのない夢のような恋愛感情を持ってしまいます


そしてそれまで彼女の周囲にいた男性は、自分の誰かの互換品として扱うような者ばかりであったことに納得しながらも静かな恐怖を抱きます。

了承の上とはいえ彼らのほとんどには既に彼女がおり、少なくとも誰一人として彼女を一心に見据える者は存在していなかったのですから。

自らを人魚に見立て一般人を別世界の人であると扱いながら、彼女は予測される寿命を恐れ陸地へのあこがれ、一般的な普通の恋愛へのあこがれを抱いてしまいます。

もし自分かもうすぐ死んでしまうとして美術作品もぱっとせず、自分を強く求める者もいない中で私はこの世に何も遺せずにいなくなっちゃうの?

家系に伝わるジンクスが真実であるならば、ナジュにとっての人生はあと一年の猶予しか残されていません。

私に今から人生の在り方を変えることなんてできるんだろうか。

最早入学当初ほどの夢も情熱も無くして、まだやり直せるのだろうか。

落ちこぼれの大人になりきれない美大生は悩み、もがきます。

果たして彼女に未来は訪れるのでしょうか。

彼女は陸に上がり、人間になることは叶うのでしょうか。


なんというか、本当に一人のこじらせた女子大生の世界ですべてが完結する小説です。

二十歳で全てが終わってしまうだなんてジンクスは、別に作中では細かい描写を伴わないために単にナジュのある種の強迫観念か妄想ではないかと思わせるほどぼんやりとしています。

それでも若干の異常は感じられるほどに彼女の一家の女は二十で倒れてしまっているのですが。

ライチ☆光クラブが聞いたら卒倒しそうなことばかりだなって思いました。

一番美しいまま終われるなら私もその方がいいんだけど。

あと美大がテーマであるために、日常のパートとしてアトリエのシーンが多く登場しますがその中の「壊れ方が足りない」から君には作品への成果が表れない、という表現は若干でも美術をかじるものとしてはわだかまりのようなものを感じました。

作者が述べたかった表現としては、感情の爆発やあか抜けた感触を指示していたのかもしれませんがこの性と愛を強く語る小説において美術の学習として壊れることを勧めるのは、ちょっとどうなんだろうなと思いました。

いや……こういう意見が「恋愛小説にマジレス乙」の可能性は非常に強いですけれどね。

感情論や愛でどうにかなる美術はあまり私の好むものではないし、せめて真摯に技術を磨くシーンぐらい挟んでくれればよかったのにと思ってしまいます。

ただ作品内に登場する具体的なブランド名やアーティストから、作者の美意識の高さはうかがえるなと感じました。

読んでるうちはまあ楽しいけれど、結末が無理やりにも感じられる良くも悪くもふわっとしたスナックな小説です。

私には腑に落ちないけれど、主人公が幸せならまあそれでもいいですけどね…。

これはそんな小説でした。

人都でした。

2020年10月21日水曜日

21、レヴォリューションNo.3

 こんちは人都です。

レヴォリューションNo.3 金城 一紀 https://www.amazon.co.jp/dp/406210783X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_V8eKFbSBKETPK

今日の本は昨日言っていた、図書館のリサイクル本要するに廃棄救済の無料配布コーナーでいただいてきた内の一冊です。

最近というのも主語の大きさで怒られてしまいそうですが、私は基本的に時勢の流れに逆らうような中身の内容をほとんど理解できないようなシンプルなタイトルをつけている作品が好きです。

表紙の目力と引力、表紙買いに近しい選び方をした一冊ですね。

この本はある青春少年の一団を取り上げた、2001年出版のカジュアルな小説で表題作の「レヴォリューションNo.3」、それから少し後の物語「ラン、ボーイズ、ラン」、そして最終章である「異教徒たちの踊り」の三編で構成されています。

90年代の最終期の質感を湛えた、暴力と初々しいスケベ心や大人への反抗を糧に行動する最高にばかばかしくも羨ましい少年らの青春小説です。


主人公である語り部の「僕」は、新宿区の落ちこぼれた不良ばかりがたむろする男子校に通学する家庭崩壊経験者であり、独特で一方的な失恋も経験した周囲よりは若干賢い高校生です。

それでも彼の通う周辺の学校はといえば偏差値が高い学校であったり、お嬢様の集まることで有名な女子高があったりと推測に難くない明確な要因から、彼らの学び舎は周囲の学生から眉を寄せるような存在として悪名高く認知されていました。

その認知は実際間違ってはいません、言ってしまえばそこは絵にかいたようなFランのバカ高校でした。

ガラの非常に悪い生徒や生傷やセンシティブな問題を抱えた学生が最後に落ちるような高校であることは実際に事実でありましたし、若気の至りともいえる後先を顧みない問題行為についても学校全体でしょっちゅう耳にするような土地柄がそこには存在していました。

大学の進学率もあり得ないほど低いような、とても学び舎とは言いにくい治安半壊の高校です。

そんなある日、「僕」が受講していた生物の教師が急に脈絡もなくこんなことを言い出したのです。

「君たち、世界を変えてみたくはないか?」

その瞬間にほとんど崩壊していたクラスの視線と意思は、その発言の意図に惹きつけられました。

大人らしくないことを話す生物教師「ドクター・モロー」は続けます。


君たちは生まれつき勉強が苦手なようにできていてここにいるのかもしれない。

このクラスの親にどこかの名門の大学を出た者はいるか?いないようだね。

つまりはそういうことだ、勉強が苦手な親から遺伝して君たちは生まれたんだ。

ただ、この状況を打破することが出来る一つの行動がある。

それは「勉強が得意な女の遺伝子を獲得すること」だ。

要するに秀才の女を恋に落とし、あわよくば番となり子を産ませればそこから何らかの道は開かれるかもしれない!


おおよそ教師が語るべきではない内容に、年頃の愛と性に飢えた不良たちは沸き上がります。

彼らが恋を為すためには当然女子高生にアプローチを仕掛けるべきです。

しかしながら周辺の名門女子高はリスク回避のため防御が非常に固く、一人で特攻を仕掛けたところで追い返されるのが当然といったところでしょう。

ですから、彼らは徒党「ザ・ゾンビーズ」を結成し三年もの歳月をかけて、この女子高にカチコんで賢い女の子とお近づきになるために拙くも懸命な努力を行うことを決心しました。

バカだと思うでしょう?ですけれど、青年らは誠にまっとうに荒唐無稽な信念を貫こうと奮闘することを止めようとはしないのです。

標的は学園祭、騒ぎを起こしてでも暴力で語ろうともとにかく彼ら「ザ・ゾンビーズ」の信念はばかばかしくも不純で純粋です。

いや、もしかしたら本当はカレカノなんかよりもこの困難と大人に向かって徒党を組んで反逆する生臭くて汚い感触が、一番青年の拠り所だったのかもしれない。

「ギョウザ大好き!」と叫びながら集団で女子高の門に突入しナンパに命を懸ける様相は、最高にアホらしく一周回って読者の心をもなぜかつかみます。

バカで何も考えられないような青年たちに淡々と迫る危害や確証の取れない揺らぎ、欠けて戻らない者と本当に実在した全くかっこよくない死の質感と人種の差別、そして卒業後の未来……。

それでも彼らは走ります、悩み考えながらもまずそのこぶしを振り上げ前へと進みます。

金にスケベにそれっぽい知識に暴力に犯罪に、そして夢に。


もうね、これまた非常に治安が悪い小説です。

だけれどこの小説は何故だかそのひとつひとつは実にさらりとしていてグロテスクな胃もたれは引き起こさないんです。

よく調べたらこれは直木賞作家の作品らしいですね。

そしてこの本にはいくつかの続刊が出ているそうで。

しばらくいわゆる「著者読み」のようなことをしていないせいで、私はあまり作家の名前には詳しくない口です。

できれば青春の頃に出会いたかった本ですね、弟に読んでほしいかと言うと迷ってしまいますけれど。

うっかり真面目に十代を済ませた者にとって、若気の至りという奴にはとてもあこがれを抱いている節があるのです。

もちろんこんな危ない人たちが現実にいたとしたら当然かかわりたくもありませんが、創作物の良いところはそういう架空の理想を追体験できることだと思っています。

こんなにばかばかしくて信念も訳が分からないのに、確かに読者を惹きつけてその上で生きることを考えさせられる。

これはそんな小説でした。

とてもおすすめです!

人都でした。



2020年10月20日火曜日

20、氷の華

 こんちは人都です。

氷の華 (幻冬舎文庫) 天野 節子 https://www.amazon.co.jp/dp/4344411552/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_uwWJFb9TJA7YM

やっとね!久々に新規小説を読めました、タスクがバカ!

ちょっと前にも話していた気はしますが久しぶりに正統派な、というか警察がちゃんと仕事をする小説が読みたくなりちゃんとあらすじを確認したうえでこの本を手に取りました。

正統派長編ミステリーは健康に良い。

必要以上に性的が出てこないのが良いですね、嫌いという程ではないのですが個人的には女性の艶めかしさとミステリは違う頭を使っている気分になってしまうので。

しかし本当にこれはいいミステリーです、序盤の意味不明を全てパズルのように回収する。

確かに正統派すぎて内容が突出はしないんだけど、最近は突出したものばかり読んでいたもので、謎解きに暴力が絡まないの偉いな……。

斬新なトリックよりも散りばめられた物証を追い続ける刑事がこれまたいい。

主人公を取り巻く環境や小道具が何となく優雅なのも、事件とのコントラストでより良い。

本当に古き良きサスペンスドラマ。

ちなみになぜか手に取るミステリーの多くは実写化されているのですが、これも存じ上げておりません。


この作品の主人公は裕福な一軒家にて子供を持たず、家事も家政婦に委託し適度に夫を愛しなが自らの美貌にも気を遣うゆったりとした上流階級的専業主婦の恭子です。

子供を持たず、といっても彼女は決して自らが望みそのような家庭に至ったわけではなく先天的な不妊体質、そしてそれらを乗り越えるための治療に長年失敗してきたという経緯がありました。

そのような挫折を抱えながらも、彼女は非常に自信家かつ自分を肯定的に捉える傾向が非常に強い…セレブマダムなりのプライドを抱えていたものですから、これが自らの選んだ先進的なライフスタイルであるというように主張するようになり、それどころか「一般家庭」については若干見下すような視線を送りながら淡々とした生活を送っていました。

しかしながら、裏返してしまえばそれは恭子にとって一番のコンプレックスであり恥であり、弱点でもありました。

どれだけの費用をかけても子供を作ることが出来ない、養子すら組めず恐らく今後一切母としてふるまう日は来ないのだろう、そして家事らしい家事はほとんどを家政婦に委託しているために確かに生活は悠々自適だが、それは世間一般の妻の役割を果たせているといっていいのだろうか。

そんなわだかまりもあり、恭子は仕事を持ち自立していたり子供の話ばかりをする輝くような女性のことをあまり好んではいませんでした。

そんな痛々しいな傷口は、突然の受話器が殴りつけられます。

私はあなたの夫の不倫相手だ。夫は私の子を妊娠している。ビール用のコップを用意することしかできないあなたよりもずっと妻らしいでしょ?あなたと私は他人だけど、私とあなたの夫は他人じゃない。だから海外赴任から帰った夫はあなたに離婚を切り出す予定。いい気味ね。

聴いたことのないけだるく生意気な女の声は、大体そんなような内容を電話越しに恭子に伝えたのです。

そのことを証明するように嘲笑する女が伝えた場には、確かに夫のサインの入った母子手帳が存在していました。

恭子は慟哭します、どんなに治療を重ねても子供を産めないという、ごくわずかな人間しか知りえないコンプレックスで精神を切り裂かれ、電話先の彼女は持っていないものを全て満たしたうえで、夫まで連れ去るようなことを予告してくるのですから。

そして彼女は不倫相手をほとんど衝動のままに殺害します。

使用したのは庭の整備に活用するための農薬で、衝動かつ理性的に彼女なりの完全犯罪を夫が帰宅する前に、アリバイと共にすべてを時刻通りの恐ろしいスピードで仕立て上げました。


そして事件は認知され、犯人は不明であるとの情報と共に報道も行われるようになったある時、恭子は気づきます。

いくら経っても、不倫先の女が妊娠していたなんて情報は流れてこないのです。

そういえば、なぜかあの電話先の女はご丁寧に母子手帳を入れた封筒に住所まで書き込んでいたが、そんなことを普通するだろうか。

もしや、自分が騙されていて全く関係のない女を手にかけてしまったのだとしたら?

そう考えを巡らせた彼女は段々と身に迫る警察を撒きながら、真の電話口の人物を知る手立てはないかと行動を始めます。


あらすじが長くなってしまいましたが、本当にこのミステリーの正統派感はがっしりとしていて素晴らしいです。

ミステリーの内容をこれ以上語りすぎるのはまずいのでこのあたりで終わります。

人都でした。


2020年10月19日月曜日

19、毎日こむぎねんど

 こんちは人都です。

毎日こむぎねんど しばたたかひろ https://www.amazon.co.jp/dp/4837310672/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_vPAJFbP1AA23Y
今日は久々に調べ物をする必要に駆られ、図書館に行っていました。
結局相当狭い分野だったので、あまり得たい情報は得られなかったんですけれどね。
ただまあ何となく興味のある本を五冊借りて、あとリサイクル本として無料配布されていた本をまた五冊いただいきました。
本棚がどんどん限界になっていきます。
そのうち読んでここに書いていきたいですね。

今回は評論でも物語でもない手芸作品集の話をします。
この本の著者であるしばたたかひろさんはTwitterでも精力的に活動をされているアニメーションや造形を得意とする作家さんです。
彼の造形の特徴は、その緻密な観察眼はもちろんのことその日常に異常に密着したモチーフを題材としているところです。
それもまるで物質が原型を失ったり物としての役目を終えたようなそんな時を閉じ込めたレプリカは、一瞬の困惑と共にじわじわとこみ上げる感情を人に抱かせます。
例えば、「表面のチョコからなくなるアイス」からはじまり「もうじき溶けきるバブ」や「皿からはがれなくなったスライスチーズ」「乾燥した冷えピタ」「歯槽膿漏」「カラオケBOXの椅子を雑に補修しているビニールテープ」「なんかケーブルテレビで見まくった虹色画材」「ちょっと嫌な感じになった絆創膏」「先っぽをガシガシしたアイスの棒」「焼きすぎた牛タン」「カレーを洗ったスポンジ」など。
正直に言ってしまうのであれば、その緻密に作成された作品のほとんどが生活の中の残り物やゴミ、クズに該当するものです。
しかしながらその全てが本当に真摯に、そして見まがうほどの再現度で現実に新たな被造物として作品化されています。
確かに認識の中に存在はしていて、身に覚えもあるけれどあまりにも醜くて、正直汚いとまで判断することがあるほど気にも留めようがない。
すべてがダサいもしくは一瞬で失われそうな本当にちみっちゃい題材なのになぜか真摯に作られすぎているせいか目が離せなくなる。

私がこの本を買ったのはそれこそ、このしばたたかひろさんの個展が行われていた会場で本当にふらりと大学帰りに立ち寄ったのですがその指先程の作品に一瞬に目を奪われこの本を個展の売店で購入しました。
私は元々趣味で粘土細工を嗜んでいますが、樹脂粘土でも軽量粘土でもなく非常にシンプルな小麦粘土で造形を行なっているというのも普通なかなかマネできたものではありません。
本当に百ページ近くがすべてこの小さい宇宙で満ちています。

おすすめです。
人都トトでした。

2020年10月18日日曜日

18、大魔法峠

 こんちは人都です。

大魔法峠 (角川コミックス・エース) 大和田 秀樹 https://www.amazon.co.jp/dp/B0093G9EVS/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_vVfJFbXAXNZ5P

表紙がいいよね!違う商品陳列罪で怒られなさいよ。

何事にも源流というやつは存在しますが、それについてを中途半端な知識で言ってしまえば更なる知識人に首ごと叩き落とされるというのはジャパニーズインターネットカルチャーのあるあるだと私は経験より思っています。

ですから、まあこれが暴力系マジカルの源流かといっていいかは私にも断言できかねます。

ただし、自分の背後で国会議事堂を燃やして舞い踊るマジカルガールの初代はきっと彼女でしょう。

破壊的な魔法少女はもうまじでたくさん出回っていますが(マジカルファシズムも認知してるよ、美少女魔法少女恐竜天使戦士も分かるよ)、破壊的「魔女っ子」の中では間違いなくトップクラスです。

あとたまに意地悪な人が魔法少女詳しいの?じゃあこれは?みたいな感じで大魔法峠とかドクロちゃんを提示してくるんですよね、履修も単位も取ってるわよ。


この物語の主人公は、赤い目玉のリボンがかわいい異界支配者候補の田中ぷにえちゃんです。

彼女は一年間女王試験として天空から人間界に降りて試練を受けることとなり日本の学校に入学するのですが、その先で多くの一般人の注目を一瞬で集め一躍アイドル転校生として学園での立ち位置を確立します。

しかしながらそんな彼女のスタイルに良い印象を抱かないアウトローな女子生徒も確かに存在していました。

ただし、その不良生徒の彼女への印象はある意味では正しい危機意識の持ち方であったという事が出来るでしょう。

なぜなら彼女のキュートフェイスの裏側には、叩きこみの帝王学と人を使うものとして扱うための真っ黒な戦略、ついでに完全に自分以外のほとんどを蔑むようなド尖りな思想が蠢いているのですから!

ですからそんなぷにえちゃん、一般人のただの女に暴力を振るわれそうになったところで舞って歌って呪文を唱えればたちまちどんな(身辺)事件も解決。

リリカル・トカレフ・キルゼムオール!

だからぷにえちゃんを本当に怒らせたりなんかしたらいけません。

魔法で事が済むならいいのですが、彼女の一番恐ろしい魅力はそのキャワな肉体に秘められているのですから。

自らの身がかわいいなら肉体言語を彼女に絶対に使わせてはいけません。

絶対に!


読むギャグ全部キャラクターの損壊がリセットされる奴ばっかりだなお前。

あれなんですよ、女の子がかわいいのと同じくらい暴力の描き方が上手い、あと言葉回しも面白くて声に出して読みたくなる、くそっぷにえがかわいいのが悪い、ぷにえが悪いんだよ。

関節技なのにコマが映えるんですよ、メチャクチャ痛い、ほぼプロレス。

あくまで暴力魔法少女ではなくて、暴力魔女っ子なんですよ。

魔法の世界から不思議な女の子が試練のために降りてくるとか、こんな内容ながらちゃんと呪文詠唱をしたりなぜか謎の歌詞が混入して急に歌うよ状態になったり。

全部強い女(物理)、涙も刃、笑顔も毒物。

ムダズモの作者さんの作品なのはだいぶ後になって知りましたね。

確かにやけに戦争とか武装ネタが出てくるんですよね、ぷにえちゃんが強すぎて作品内パワーが壊れているのもありますけど……。

私は鉄オタで芋な鉄子ちゃんがかわいくて好きです、強力な女の隣に非力な女がいる構図はいくらあってもいい。

可愛さのギャップのダークバイオレンス権力ギャグがすごくスパイシー、愛と希望と自分のかわいさを完全に理解して武器として活用する悪少女。


魔法少女最終フォーム抜き最強トークをするときは、いつもこの女が負けるプランが見えません。

ああ時間が足りないので終わります。

おすすめです。

人都でした。



2022/2/6

  こんばんは、人都です。 お久しぶりの更新ですが、またあまり快いことを書かないことを許してください。 本当にこの場所が肥溜めのようになっていることを案じてこそいますけれど、本来は絵よりも文のほうが気楽な私には重い悩みは絵にぶつけるよりも書き出す方が安眠剤になるのです。 私の親が...