こんちは人都です。
レヴォリューションNo.3 金城 一紀 https://www.amazon.co.jp/dp/406210783X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_V8eKFbSBKETPK今日の本は昨日言っていた、図書館のリサイクル本要するに廃棄救済の無料配布コーナーでいただいてきた内の一冊です。
最近というのも主語の大きさで怒られてしまいそうですが、私は基本的に時勢の流れに逆らうような中身の内容をほとんど理解できないようなシンプルなタイトルをつけている作品が好きです。
表紙の目力と引力、表紙買いに近しい選び方をした一冊ですね。
この本はある青春少年の一団を取り上げた、2001年出版のカジュアルな小説で表題作の「レヴォリューションNo.3」、それから少し後の物語「ラン、ボーイズ、ラン」、そして最終章である「異教徒たちの踊り」の三編で構成されています。
90年代の最終期の質感を湛えた、暴力と初々しいスケベ心や大人への反抗を糧に行動する最高にばかばかしくも羨ましい少年らの青春小説です。
主人公である語り部の「僕」は、新宿区の落ちこぼれた不良ばかりがたむろする男子校に通学する家庭崩壊経験者であり、独特で一方的な失恋も経験した周囲よりは若干賢い高校生です。
それでも彼の通う周辺の学校はといえば偏差値が高い学校であったり、お嬢様の集まることで有名な女子高があったりと推測に難くない明確な要因から、彼らの学び舎は周囲の学生から眉を寄せるような存在として悪名高く認知されていました。
その認知は実際間違ってはいません、言ってしまえばそこは絵にかいたようなFランのバカ高校でした。
ガラの非常に悪い生徒や生傷やセンシティブな問題を抱えた学生が最後に落ちるような高校であることは実際に事実でありましたし、若気の至りともいえる後先を顧みない問題行為についても学校全体でしょっちゅう耳にするような土地柄がそこには存在していました。
大学の進学率もあり得ないほど低いような、とても学び舎とは言いにくい治安半壊の高校です。
そんなある日、「僕」が受講していた生物の教師が急に脈絡もなくこんなことを言い出したのです。
「君たち、世界を変えてみたくはないか?」
その瞬間にほとんど崩壊していたクラスの視線と意思は、その発言の意図に惹きつけられました。
大人らしくないことを話す生物教師「ドクター・モロー」は続けます。
君たちは生まれつき勉強が苦手なようにできていてここにいるのかもしれない。
このクラスの親にどこかの名門の大学を出た者はいるか?いないようだね。
つまりはそういうことだ、勉強が苦手な親から遺伝して君たちは生まれたんだ。
ただ、この状況を打破することが出来る一つの行動がある。
それは「勉強が得意な女の遺伝子を獲得すること」だ。
要するに秀才の女を恋に落とし、あわよくば番となり子を産ませればそこから何らかの道は開かれるかもしれない!
おおよそ教師が語るべきではない内容に、年頃の愛と性に飢えた不良たちは沸き上がります。
彼らが恋を為すためには当然女子高生にアプローチを仕掛けるべきです。
しかしながら周辺の名門女子高はリスク回避のため防御が非常に固く、一人で特攻を仕掛けたところで追い返されるのが当然といったところでしょう。
ですから、彼らは徒党「ザ・ゾンビーズ」を結成し三年もの歳月をかけて、この女子高にカチコんで賢い女の子とお近づきになるために拙くも懸命な努力を行うことを決心しました。
バカだと思うでしょう?ですけれど、青年らは誠にまっとうに荒唐無稽な信念を貫こうと奮闘することを止めようとはしないのです。
標的は学園祭、騒ぎを起こしてでも暴力で語ろうともとにかく彼ら「ザ・ゾンビーズ」の信念はばかばかしくも不純で純粋です。
いや、もしかしたら本当はカレカノなんかよりもこの困難と大人に向かって徒党を組んで反逆する生臭くて汚い感触が、一番青年の拠り所だったのかもしれない。
「ギョウザ大好き!」と叫びながら集団で女子高の門に突入しナンパに命を懸ける様相は、最高にアホらしく一周回って読者の心をもなぜかつかみます。
バカで何も考えられないような青年たちに淡々と迫る危害や確証の取れない揺らぎ、欠けて戻らない者と本当に実在した全くかっこよくない死の質感と人種の差別、そして卒業後の未来……。
それでも彼らは走ります、悩み考えながらもまずそのこぶしを振り上げ前へと進みます。
金にスケベにそれっぽい知識に暴力に犯罪に、そして夢に。
もうね、これまた非常に治安が悪い小説です。
だけれどこの小説は何故だかそのひとつひとつは実にさらりとしていてグロテスクな胃もたれは引き起こさないんです。
よく調べたらこれは直木賞作家の作品らしいですね。
そしてこの本にはいくつかの続刊が出ているそうで。
しばらくいわゆる「著者読み」のようなことをしていないせいで、私はあまり作家の名前には詳しくない口です。
できれば青春の頃に出会いたかった本ですね、弟に読んでほしいかと言うと迷ってしまいますけれど。
うっかり真面目に十代を済ませた者にとって、若気の至りという奴にはとてもあこがれを抱いている節があるのです。
もちろんこんな危ない人たちが現実にいたとしたら当然かかわりたくもありませんが、創作物の良いところはそういう架空の理想を追体験できることだと思っています。
こんなにばかばかしくて信念も訳が分からないのに、確かに読者を惹きつけてその上で生きることを考えさせられる。
これはそんな小説でした。
とてもおすすめです!
人都でした。
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