2021年8月30日月曜日

2021/8/30

 

こんばんは、人都です。

私はかなり具体的に好んでいるパーツやモチーフがある方で、現実に使うものや創作のモチーフまで多くの場に灯やカンテラのモチーフを持ち出します。
広く言えば照明器具や燃料、細かく言えば電灯よりもアルコールなどで燃焼しながらあたりを照らすランプが大好きなのですね。

この趣向がどこから来ているのだろうと考えると、それは親のアウトドア趣味及びキャンプの経験からではないかなと思っています。
スマホなんてないガラケーの世界で、予約した旨をプリントした紙束を持って川沿いや海沿いやハチャメチャの山中に生活用品ごちゃ混ぜの車で向かって二泊ぐらいしていくのが、私が大学に上がるまでに長期休暇におけるしょっちゅうのルーティンでした。

しかも親は本格派志向なので、本当に整備されたところには中々行かずにそれこそ崩落事故をおこしそうなギシギシする木組みのアスレチックや整備されているとは言いにくい谷底の遊び川などがある剥きだした場所を好んでいたように感じます。
さすがに今は身内も歳を経て、昔ほど弾丸で車の日本旅行とかをすることは無くなってしまいましたが。

ああ、それで私のカンテラへの好意はそんな野生的な宿泊の中で育まれていました。
本当に真っ暗な森のテントの中、エアーを入れ込むベットの不自然な柔らかさで上手に寝付けない中、大人たちが晩酌を楽しんでいて、まだ大きなバーベキューセットの炭火がぱちぱち音を立て焼いていて。
そして不自然な空気の静けさに矛盾する、都会住みにはよくわからない声のする虫の合唱とガスをごおと燃やしながら蛾を集めるキャンプ用の大きな金属製のカンテラ。

それが本当に明るくて暖かくて、だけれどこんな枯れ葉の山奥で支えの棒が転倒したらどうなるのかと杞憂なもしもを考えるとどこか怖くて。
キャンプ場に限らず家ではないどこかで一晩を超すことはこの歳になってもどこか不思議な気持ちがあって、目が覚めて見回してそこが本棚まみれの部屋でないことに気づくとここが家ではないことをふわふわと恐ろしく感じるのですね。
おかしな話に聞こえますが、私には外泊するともう生という意味で目を覚ますことが出来ない気がする極端な不安と違和感の壁というものがあって、それを程よく整えられた寝具により眠気でなし崩しにするように眠りへ陥いります。

だからこそなんでしょうか、無機的なのに有機的な矛盾したガス性のカンテラに夜を灯された思い出からか私はああいった燃焼を伴う照明がモチーフとしてとても好きなのです。
灯止とうとも忘却炉も誘蛾灯日記も、各種ソシャゲに使用しているユーザー名からリヴリーのネーミングに至るまで全てそれらに関連した興味と憧れから来ているものです。
SCPでも特に酩酊街ものは大好きですよ、ふわりとアルコールの香る忘れられたものの行きつく世界の話。
部屋の照明器具は大きなシーリング以外では傘の部分の大きいけれど照らせる範囲は限られた読書用のものを設置しています。
大好きな現代美術家は宮島達男さんです、有機的で無機的でアナログかつ一定に揺れ行くものを照らして表現する作品は個展を訪れるたびに私の時間を幸せに失わせます。

有名な怪談に死神の名付け親というものがあります。
私は童話として認識していましたが落語の方が著名なそうですね、あと米津玄師。
死神と組んで医者を始めた男が金に目をくらませて理を壊す延命を行なって、その後にある洞窟へと案内をされるとそこには無数の寿命を燃料に蝋を少しづつ蝕み灯すろうそくがいくつも存在していたと。
私の大好きなあの子の名前の由来になった、要は永遠のない物質化された命の灯を理通りに止める因果応報の話なのですが。
これはオカルトと現実とフィクションの混同で、バカげた話ですが私はこの話のように、人の命もこの寓話のようにどこかにあるろうそくを燃やして世界を少しだけ明るくしていつかは残りかすを垂らして消えるものなのだと思っている節があります。
それは古典的なろうそくに限らず、街灯や誘蛾灯や白熱灯、裸の電球にきらびやかに刹那なネオンや寿命の恐ろしく長いLEDなんかのいろいろな明かりの形があると思っていて、それならば私の命はガス灯の金属製のキャンプ向けカンテラであってほしい。
ガスは缶の後処理は面倒ですが、明かりという形のない結果を残して跡形もなく消えてしまうというロマンもある。
落語や舞台に再演はあれど同じ舞台は一つもないですが、似たように命は再点灯されず一度も戻れずにただ燃やしている。
だからこそ生きていく中で無為に何も残らないという事を恐れたりロマンを感じたりしながら、少しでも一瞬でも何かを明るく灯せるように生きていきたい。
煙と煤を吐きながら長々と縮じこますぐらいなら、一瞬でもごおっと夜を照らして一夜の不安を忘れられる熱を与える強い光になって、生き急いだ後には気づけない程のいない空気になってしまいたい。
だから、そんな理想と思想で私は灯火とカンテラのモチーフが好きです。

おやすみなさい。

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