こんちは人都です。
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃文庫) 鴨志田 一 https://www.amazon.co.jp/dp/4048664875/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_xSETFb45Z0E7G珍しく新しいラノベに手を出しました。
何故かといえば、見てもいなかったアニメ版のエンディングテーマである「不可思議のカルテ」という歌が単体で良すぎて。
あと、少し前に引退されたにじさんじのバーチャルライバー「出雲霞」ちゃんが最期の最後の歌枠で歌い上げた曲でもあります。
かざちゃんもピアノアレンジで歌ってます。
曲にいろいろな人の思い出がカルボナーラみたいに絡むから、感情ってぐちゃぐちゃにいつもなるんです。
あまりに曲が良すぎて、あと好きな子の一つのエンディングテーマとなってしまった事実が重たく、原作を読んで感情を消化しよう、と思い至ったわけです。
鴨志田一さんの作品は「さくら荘のペットな彼女」だけアニメで見た程度なので、ほとんど無知です。
全てに対して非常にデリカシーが無く、過去の経験からデジタルデバイスを持ち歩かない対人能力が極端な高校生男子・梓川咲太はある平凡の図書館の中で、スレンダーかつ扇情的なバニーガール衣装を見事に着こなす異常な美少女を瞳に捉えます。
図書館に扇情的なコスプレ女など存在して良いはずがありません、公共の場であり秩序と活字が支配するその無口な施設の中でその少女は際立った異物でした。
それなのに本棚や机、図書館の利用者たちはそんな野生の異常者を気にも留めません、無視をしているとか見ないふりをしているとか、そういう範疇を明らかに超えて。
まるでその姿は主人公である咲太にしか視認できていないかのように。
見つめれば見つめるほどに不可解です、そのスタイルに負けず整った顔面は記憶さえ正しければ自分と同じ高校に在学している先輩と確かに同一で、かつて各種メディアに引っ張りだこであったステージを降りたはずの少女にあまりにも似通いすぎています。
彼女は自分に気づいた唯一の青年におちょくるように言いました。
「君にはまだ私が見えてるんだ」
彼女の恥知らずな検証実験は、確かに一人の無礼な男の子を釣り上げました。
この世界にはすこしの不可解な事象が、ネットワークの発達した世界においても透明にそして確かに存在していました。
誰もが見なかったことにする異常、医者ですら気の違えと誰もが判断する原因を提示できない傷害。
咲太はその、一瞬青春特有の妄想にも思える現象を「思春期症候群」と名付け、実際に被害に遭遇した(と想定される)自らの妹の為に向き合おうとしていた経験を持つ青年です。
彼の母親はその妹の道理の通らない奇病で精神に異常をきたし、父親に付き添われながら自らも療養を行なっており、まさに家族を破壊してしまったのがその「青春症候群」であると咲太は睨んでいました。
そして彼は「バニーガール姿を見た」という言質を掲げながらその症候群を調べる立場から麻衣に一つのある提案を行い、伴って生活に困ってしまう程不可視な彼女の日常に沿ってゆくこととなるのです。
誰にも認識されない彼女、誰にも覚えてもらえなくなっていく彼女、忘れられる彼女。
こんなに世界は広いのに、いつの間にか、麻衣のことを知っているのは咲太だけだと言わんばかりに。
なんというか手に取るのにタイトルのパンチが強すぎますが、作内でバニーガール姿の先輩は本当に冒頭の一度きりのシーンにしか現れませんよ。
「青春ブタ野郎」である主人公は、青春特有の達観臭さを持ち合わせつつ本当に誇張なく人に配慮を払いません。
どれぐらいかといえば、イラついた女子生徒に対してノータイムで「生理?」って聞くぐらいの癖の強さ。
見る人が見ればカンカンに怒られそうな彼のキャラクターですが、転じていうのなら人が誤魔化すようなことに対しても無鉄砲に容赦なく行動に起こすことが出来るという無二の長所があります。
この本のメインヒロインにあたる「桜川麻衣」もなかなかにアクの強い偏屈で複雑なうっとおしいほどに一筋縄ではいかない女の子、なのにそんな非合理さに魅力を感じるのがライトノベルの魅力でしょうか。
前半までの内容は良くも悪くもラフな文体かつ、甘々妹に勘違い暴力少女、白衣系ふしぎガールとカリスマな元子役の高嶺の花な先輩といったヒロインテンプレートをしっかり一巻で提示する日常学園ライトノベルです。
文調も軽いですし、主人公とヒロインの掛け合いはラブストーリーというより漫才でテンポがとにかく良く、そのせいもあり後半にかけて問題が深刻化していく状況が胸に刺さります。
ところどころに大抵主人公のせいでお下品な言葉はありますが、実際の描写にはスケベは少なくどちらかといえばセカイ系風味の青春SFボーイズ・ミーツ・ガールです。
ただしSFとはいっても、その問題の原因や伏線が深く解明されるのはまた続巻の可能性がありそうです、とりあえず腑には落ちますが都合のいい困難って言ってしまえばそれまで感は若干あります。
そして、わたしって生き物は「非実在の女の子」ってモチーフにめっぽう弱い。
バーチャルにかぎらず「君には私が見えるんだ?」というシチュエーションにそそられないわけがない。
空気は無くなってしまえば息が詰まるのに眼中には入らない、だけれど絶対に必要な。
見ていなければ忘れてしまいそうな存在、すれ違う二度と会わない人にもあるはずの人生。
結末のあれは二巻を買え!ってことなんだろうな…。
あと加えるなら、作品舞台がしっかりとされておりいわゆる聖地巡礼も容易そうな部類の情景描写が多い作品ですね、アニメもにわかから見ても分かるほど丁寧なロケハンがされていそうな緻密さです。
現実と二次元の融合は古来より五億点とされています。
あー非実在の女良い…わからん、シンプルに私の趣味すぎて本の感想がブレブレです。
次の給料日に続刊を買おうと思います。
この本を読んでから不可思議のカルテの歌詞がふわっとしたエモ以外にも、原作を踏襲した裏打ちがある名曲だと分かったので、良い曲です。
人都でした。
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