2020年10月15日木曜日

15、ライチ☆光クラブ

 こんちは人都です。

ライチ ラライチ ララライチ

ライチ☆光クラブ 古屋 兎丸 https://www.amazon.co.jp/dp/B00G2678D8/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_UifIFb1YCJRZ4

ライチ光クラブは最高ですよそれは……描かれる全てが過激。

最高のグランギニョル、耽美残虐劇です。


物語の舞台は近代の急激な発展により工場の排気と老いた大人の虚無感に包まれた町、螢光町。

そしてその一画の廃工場に年頃のまだ大人ではない少年たちによる、ある信念を掲げた結社「ライチ光クラブ」が存在しました。

それはまるでナチズムのように統率を執る圧倒的な頂点が存在し、若い肉体を包む学生服をまるで軍服かと見違えるほどに冷徹で、それでいて赤子のように欲望に忠実で虫を潰すのも人を解剖するのも彼らにはほとんど等しく、自らの曖昧な存在をコードネームで規定する少年たちのあまりにも異質で異常な集団です。

彼らには部外者にどんな犠牲を払わせてでも叶えたい、いや叶えなくてはならない一つの崇高かつ未踏の機密がありました。

それはクラブにおいて永久の美の象徴として偶像役を務めさせるために、美しい少女を攫わせる力を有する、肉を持たず醜悪ではない無機を主体とした手先とする為のロボットを作り上げるという計画です。

人間は年を経れば経るほどに醜悪な容姿を晒し、その癖美しくあろうと足掻くものの結局薄皮の下には等しく臓物が蠢く生命であると彼らは思考していました。

そして彼らは、自らはその限りではないと、成長や老化には抗うことが出来るのだと妙な純粋さでそれでも

確かに信じていました。

そして、その少年らの技術と思想によって形成されたロボットは楊貴妃が愛した永遠の美の象徴である「ライチ」の名を冠し、それらを燃料として起動ナンバーの「666」と共に自らの自我に目覚めます。


まず前もって書いたように、この漫画は過激の全てを内包しています。

内臓を伴うゴア描写に性的暴力、政治思想、危ういオカルトと同性愛者に徹底された美しすぎる中学二年生じみた思想の病、大人になりたくないと藻掻きながら仲間を蹴落としあい裏切り壊れていく醜さ、誰かを妄信することで一時の不安を喜びで誤魔化す子供たち。

これぞダークサブカル!という美しくも破滅的で子供らしさにしがみ付く破滅的な自滅。

なのに、読後感はあれだけの情報のカロリーと猟奇的な鉄の匂いの紙面を持ちながらなぜか物悲しく空虚でやり切れない気持ちになってしまうのです。

あと私はライチというキャラクターが本当に大好きです、もしかしたら誰よりも人間らしい人間ではない存在を好むのはここから始まったかもしれません。

耽美で美しい少年の中で異質な無機であり、時折挟まれるモニター越しのドットのような表現や回路のコマも痛く好んでいます。

一番かわいそうなロボット。

読んでいてすごく苦しくなる、カノン……。


誰もが哀れで美しく、けれど確かに信念はあり真暗の中にもがき苦しみ落ちていく。

これはそんなアングラ十代のバイブルになった漫画でした。

……でも、ちょっと大っぴらに人には勧めづらいかな……内容が内容……。


人都でした。


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