2020年10月2日金曜日

02、拡張現実的

こんばんは、人都です。

今日は川田十夢さんの拡張現実的というエッセイ集を読みました。

拡張現実的 (Bros.books) 川田 十夢 https://www.amazon.co.jp/dp/4065193869/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_l5ZDFbJNEHYFY

この本を購入したのはブログにて前述した東京都現代美術館での特別展「おさなごころを、きみに」の物販で、それは完全な衝動買いでした。

著者である川田十夢さんは技術を操り時に発明を行いながらチーム「AR兄弟」の長男として活動されているクリエイターの方です。

特別展では映像展示をメインとし、スマホをかざすと絵柄が動き出すTシャツや街を歩き回りながらゲームの「デスストランディング」のように路地をリアルタイムでスキャニングする開発の紹介、また映像を観覧者の手で止めると画面を介さない現実まで停止するといった展示を行っていました。

拡張現実とはそんな、デバイスをかざすと絵がうごめきだすような、仮想世界が現実に侵食していくような総称してよく「AR」と呼ばれるもので、著者はその技術を中心とした活動を行っています。

http://ar3.jp/information/

表紙の「拡張現実的」というタイトルにはつるりとした特殊な装丁が施されています。

このエッセイ集は震災からコロナ禍直前まで九年間もの間テレビ雑誌にて連載されていた著者の短文が掲載されたもので、それらの内容の多くは一片の時勢や経験を有している他のメディア知識や想像力を駆使し拡張的に試行していくといったものです。

リアルから妄想を拡張し、実際にそれらの一瞬の荒唐無稽を現実に実現しているのが著者の作風です。

そしてそれは書籍、ゲーム、テレビ、ネットメディア……あらゆる表現の媒体を話題としています。

一つ一つの文章こそは短いですが、その中に含まれた前提知識と発想のとがり、独特の文章の運び方はなかなかのボリュームです。

なんなら突然実験的に語数縛りや小説仕立ての文章も挟まれる、予測不可能な271ページ。

理系も文系も、国語も理科も道徳もすべてをごったまぜにして時折意地悪ではないかと思う程総合的に多角からの思考実験にも似た妄想が繰り広げられます。

大衆的な表現の健全が本来の姿と異なっていたとしてもそれは健全に直され守るべきか、荒唐無稽な法令が制定されたとき動揺はひと時の波として時流に呑まれただ流されるのみなのか。

電車の窓に駆け抜ける忍者を見出すよりももっと大きくそして手触りに近いアナログで最適化されていない妄想を拡張現実と独特の文章センスを介して出力する異才。

「メロスの気持ちを答えよ」という問題に水滴を垂らし回答するといった文章内のエピソードからも感じられるほどそれは型破りで非常識的で、読むほどに読者の予測を現実の経験談で裏切っていきます。

現実の更なるその先を、技術と知識と果てしない創造力で切り開く方の思考をひとかけら目にしてみませんか?

この川田十夢さんはTwitter上でも多くのリアルタイムな発信をしていますから、追ってみると平凡な現実を広げるための一助になり得るかもしれません。



おすすめです。

人都トトでした。


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