2020年10月20日火曜日

20、氷の華

 こんちは人都です。

氷の華 (幻冬舎文庫) 天野 節子 https://www.amazon.co.jp/dp/4344411552/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_uwWJFb9TJA7YM

やっとね!久々に新規小説を読めました、タスクがバカ!

ちょっと前にも話していた気はしますが久しぶりに正統派な、というか警察がちゃんと仕事をする小説が読みたくなりちゃんとあらすじを確認したうえでこの本を手に取りました。

正統派長編ミステリーは健康に良い。

必要以上に性的が出てこないのが良いですね、嫌いという程ではないのですが個人的には女性の艶めかしさとミステリは違う頭を使っている気分になってしまうので。

しかし本当にこれはいいミステリーです、序盤の意味不明を全てパズルのように回収する。

確かに正統派すぎて内容が突出はしないんだけど、最近は突出したものばかり読んでいたもので、謎解きに暴力が絡まないの偉いな……。

斬新なトリックよりも散りばめられた物証を追い続ける刑事がこれまたいい。

主人公を取り巻く環境や小道具が何となく優雅なのも、事件とのコントラストでより良い。

本当に古き良きサスペンスドラマ。

ちなみになぜか手に取るミステリーの多くは実写化されているのですが、これも存じ上げておりません。


この作品の主人公は裕福な一軒家にて子供を持たず、家事も家政婦に委託し適度に夫を愛しなが自らの美貌にも気を遣うゆったりとした上流階級的専業主婦の恭子です。

子供を持たず、といっても彼女は決して自らが望みそのような家庭に至ったわけではなく先天的な不妊体質、そしてそれらを乗り越えるための治療に長年失敗してきたという経緯がありました。

そのような挫折を抱えながらも、彼女は非常に自信家かつ自分を肯定的に捉える傾向が非常に強い…セレブマダムなりのプライドを抱えていたものですから、これが自らの選んだ先進的なライフスタイルであるというように主張するようになり、それどころか「一般家庭」については若干見下すような視線を送りながら淡々とした生活を送っていました。

しかしながら、裏返してしまえばそれは恭子にとって一番のコンプレックスであり恥であり、弱点でもありました。

どれだけの費用をかけても子供を作ることが出来ない、養子すら組めず恐らく今後一切母としてふるまう日は来ないのだろう、そして家事らしい家事はほとんどを家政婦に委託しているために確かに生活は悠々自適だが、それは世間一般の妻の役割を果たせているといっていいのだろうか。

そんなわだかまりもあり、恭子は仕事を持ち自立していたり子供の話ばかりをする輝くような女性のことをあまり好んではいませんでした。

そんな痛々しいな傷口は、突然の受話器が殴りつけられます。

私はあなたの夫の不倫相手だ。夫は私の子を妊娠している。ビール用のコップを用意することしかできないあなたよりもずっと妻らしいでしょ?あなたと私は他人だけど、私とあなたの夫は他人じゃない。だから海外赴任から帰った夫はあなたに離婚を切り出す予定。いい気味ね。

聴いたことのないけだるく生意気な女の声は、大体そんなような内容を電話越しに恭子に伝えたのです。

そのことを証明するように嘲笑する女が伝えた場には、確かに夫のサインの入った母子手帳が存在していました。

恭子は慟哭します、どんなに治療を重ねても子供を産めないという、ごくわずかな人間しか知りえないコンプレックスで精神を切り裂かれ、電話先の彼女は持っていないものを全て満たしたうえで、夫まで連れ去るようなことを予告してくるのですから。

そして彼女は不倫相手をほとんど衝動のままに殺害します。

使用したのは庭の整備に活用するための農薬で、衝動かつ理性的に彼女なりの完全犯罪を夫が帰宅する前に、アリバイと共にすべてを時刻通りの恐ろしいスピードで仕立て上げました。


そして事件は認知され、犯人は不明であるとの情報と共に報道も行われるようになったある時、恭子は気づきます。

いくら経っても、不倫先の女が妊娠していたなんて情報は流れてこないのです。

そういえば、なぜかあの電話先の女はご丁寧に母子手帳を入れた封筒に住所まで書き込んでいたが、そんなことを普通するだろうか。

もしや、自分が騙されていて全く関係のない女を手にかけてしまったのだとしたら?

そう考えを巡らせた彼女は段々と身に迫る警察を撒きながら、真の電話口の人物を知る手立てはないかと行動を始めます。


あらすじが長くなってしまいましたが、本当にこのミステリーの正統派感はがっしりとしていて素晴らしいです。

ミステリーの内容をこれ以上語りすぎるのはまずいのでこのあたりで終わります。

人都でした。


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